こんにちは。前回は身体の内側からアプローチしていくことの重要さをお話しました。
今回は、美しい肌になるための美容的な観点から「シワ」について色々とお話ししていきたいと思います。
実はひとつじゃない、シワの種類
怒ったり笑ったり、しかめっつらになったり。
そんな筋肉の動きで生まれるのが、 表情ジワというものです。
表情が動こうと動かまいと、刻まれているシワは、いわゆる加齢による消えないシワ。皮膚や筋肉のたるみが原因で、加齢とともに目立つ一番わかりやすいシワでしょう。
そんな消えないシワにも、種類があります。
ひとつは目尻に多く出やすい、 浅いちりめんジワのようなもの。
そしてもうひとつは、額などに刻まれやすい 深いシワです。
表情ジワが年を重ねるごとに深く刻まれ、消えないシワになってしまう場合もありますね。
上記のイラストの中で、もっとも治療しにくいのは、どこのシワだと思いますか?
正解は、 下まぶた(目の下)のちりめんジワ。
浅いだけに、治療もしやすそうだと思うでしょう?それが違うんです。
でも逆に、アイクリームによる保湿ケアや、徹底した紫外線対策で予防ができる部位でもあります。
化粧品のよるお手入れぐらいでも改善できますから、なるべく 保湿とUVケアを取り入れましょう。
日本人にできやすいシワ、できにくいシワ
欧米人に比べると、日本人に少ないのが額の横ジワです。
なぜかというと、日本人は喜怒哀楽が表情に出にくいから。
額のシワの原因はおもに表情によるものなので、オーバーリアクションをあまりしない日本人にはシワが入りにくいわけです。
でも、油断は禁物!
年齢を重ねて皮膚がたるんでくると、まぶたが下垂し、目を開けにくくなるもの。
無理に目を見開こうとすると、額のシワがグッと深くなるんです。
同じ表情をしていれば当然、シワも入りやすくなりますから、額にシワもできやすくなりますね。
また、表面の乾燥ジワは圧倒的に欧米人の方が多いし、出始める年齢も早め。
これは顔の作りや遺伝的な部分よりも、お手入れの丁寧さの勝負じゃないかと私は思っています!
私は海外でも医療や化粧品の研究にも携わってきましたので、あちらのスキンケア習慣もずいぶん見てきましたが、日本人女性ほど美肌への意識が高い国民はいないんじゃないでしょうか。
Beautyという言葉を聞いて、欧米は「美人」をまず連想するのに対し、日本では、「美肌」が上がってくるという調査結果も耳にしたことがあります。基礎を大事にする日本人らしいなと、誇らしく思いました。
米国や韓国などは、美容医療やメイクアップにはとても積極的ですが、スキンケアに関しての先進国は日本! そこは胸を張っていいはずです。
それを反映したように、日本人には乾燥によるシワは少なめです。
逆に、欧米人よりも日本人に多くみられるシワの典型が
「ほうれい線」
なんです。
比較的横広い(丸い)日本人の顔は、頬の重力を支えにくく、全体的に顔の下半分が下がりがち。
小鼻の横から入るほうれい線、目頭あたりから斜めに下顔部に大きく入るゴルゴライン、口元から下に伸びるマリオネットラインなど、顔の下半分を中心にできる加齢ジワが、残念ながら日本人には出やすいシワなんです。
でも今は、メスを入れるような外科手術じゃなくても、美容皮膚科での注入やレーザー治療などの切らない施術でずいぶん目立たなくなりますから、信頼できる美容皮膚科を見つけてぜひ相談してみてください。
シワひとつない顔なんて、コワイだけ!
テレビを見ていると、演技をしている女優さんや俳優さんの顔を不自然に思うことがたまにあります。
表情豊かに演じているはずなのに、動くべき筋肉が固まっていたり。
年を重ねれば当然刻まれるべきシワが、まったくなかったり。
これはおそらく、ボトックス®注射やヒアルロン酸注入でシワを取りすぎてしまったせいだと思われます。
笑えば目尻にシワはできるし、怒れば眉間にシワは寄る。しかめっつらをすれば口もとのほうれい線だって深くなります。
それを全部なくしてしまったら、確かにシワのないつるんとした肌にはなるかもしれないけど、明らかに不自然!
深く影になるようなシワは、ボトックス注射やヒアルロン酸注入で改善すべきだと思うけれど、必要以上にシワを嫌う必要はまったくない。
有名なハリウッド俳優の中には、他のシワは施術で浅くしても、目尻のシワだけは残すという方も少なくありません。
でもやっぱり取ったほうがいいシワもあります。
それはなにかといえば、ズバリ眉間のシワです。
ここに縦ジワが刻まれていると、表情に険が出てしまうし、人相も悪くなる。
中国の人相学では、眉と眉の間、眉間は命宮と呼ばれる場所で、その人の人生を表す重要な部位なんだそう。日本の人相学でも、眉間にシワや傷があると、主に対人運が悪くなるというから放っておけません。
取りたいシワと残したいシワについて、鏡を見てじっくりと考えてみてはどうでしょう?
ボトックスって「顔を固める」って思ってます?
ヒアルロン酸注入は大丈夫でも、ボトックス注射(ボツリヌス毒素治療)になぜか拒否反応を示す患者さんは多いものです。
「毒素を注入して筋肉を麻痺させるもの」という間違った情報が独り歩きしているせいでしょうか。
今現在、ボトックス注射に使われる薬剤は、天然のタンパク質からできた毒素を分解・精製したもの。
20年以上前に使われていたような、ボツリヌス菌の菌体やその成分などは一切、含まれていないんです。
ではなぜ、ボトックス注射がシワの治療に効果を発揮するかというと、表情ジワの原因となる筋肉に天然のタンパク質を注射することで、筋肉をリラックスさせるから。
額のシワや眉間のシワは、しかめっつらなどでできてしまうことが多いんですけれど、その筋肉を緩めることでシワのできにくい顔にするわけです。
注射した当日は特に変化もないのですが、2~3日で少しずつ、筋肉がゆるんできます。
持続期間は約4~6か月。数週間かけて効果は少しずつ薄れていきます。
眉間のシワが気になるからといって、眉の間にだけ注射するわけではありません。シワの現れ方を見極め、ゆるめるべき筋肉を特定し、必要な量だけ注射をしないと、不自然な表情になってしまうんです。量や部位が適切でないと、顔が必要以上にリラックスしてしまい、下がり眉になってしまったり、まぶたが重たく垂れ下がったりしてしまうんですね。
効き目には個人差がありますから、効きすぎた経験がある人は、医師にそのことをちゃんと伝え、注射の量を調整してもらうことも大事です。
私は、ボトックス注射は若い人ほど向いている施術だと思うんです。
早いうちから変な筋肉を鍛えず、リラックスする習慣をつけたほうがいいと思うから。
最近はスマホやPCのせいで目に力が入りすぎて、眉間にシワができている若い人をよく見かけます。電車の中でスマホをいじっている人を見ると、20代や30代の始めぐらいの人でも、くっきり眉や額にシワが寄っていたりして。あんな顔をずっと続けていたら、かなり早いうちに表情ジワが刻まれてしまうことでしょう。
表情が豊かなせいでシワができやすい人は、ボトックス注射で筋肉をリラックスさせてあげると、驚くほどスッキリと明るい顔立ちになりますよ。
深いシワもヒアルロン酸注入でふっくら
シワを埋めたり溝を盛り上げたりするため、世界中で最も多く使用されているにが、ヒアルロン酸です。
ヒアルロン酸やコラーゲンは体内でも作られる成分ですから、皮膚とのなじみもよく、アレルギー反応を起こしにくいと言われています。
ほうれい線や唇の両脇にできるマリオネットライン、目尻…。
深いシワも自然にふっくらさせることができるため、年齢を重ねてボリュームダウンしたところに打つことが多いですね。
表情によってできるシワはボトックス注射で、加齢で刻まれ消えなくなったシワはヒアルロン酸でボリュームを補うのが、いまのシワ治療のメインストリームです。
効果があるからって、打ち過ぎにはご用心!
へこんだシワをヒアルロン酸注入でふっくらさせる。
表情で刻まれたシワをボトックス注射でゆるめてあげる。
どっちもシワ治療に有効な手段。
確かにこれらの施術を行ってシワがなくなり、美しく若々しい顔立ちになる方はたくさんいらっしゃいます。
でも、だからといって打ち過ぎるととたんに不自然になるのも、この治療の特徴。
芸能人やスポーツ選手で、なんだか顔がどんどん不自然になっていく人、思い当たりませんか?美容皮膚科の医師の立場から見ると、「ああ、やり過ぎているなぁ」と思う有名人、たくさんいます。
どんなに患者さんが望んでも、客観的に不自然になるような施術は行うべきではない。全部のしわをなくしてつるんつるんな顔にしたら、絶対にヘンに見えてしまうから。
年齢を重ねれば重ねるほど、「ほどよい老け感」は大事なんです。
でもそれは、施術を行う医師の良心によるところも大きいんですね。
できればこうした美容医療は、対等にモノが言える医師にまかせるべきだと、私は思います。理想の形を忌憚なく話せて、信用できて、嫌なことは嫌、望むことははっきりと言える医師を探すのが理想だと思いますね。
せっかくキレイになろうとして治療を受けるのに、お医者さんの言うがままではもったいない!
美容医療は、必ず施術前に同意書にサインをするもの。
ちょっとでも納得できない点があったら、サインをしちゃいけません!
洗練された若見え顔にしたいなら、アゴをつくりなさい
アジア人女性は、欧米人に比べるとアゴが短く貧弱で前に出ていないんですね。そんな骨格的な特徴から、フェイスラインから首のあたりにたるみやシワが出やすい傾向があります。
アジア女性が年齢より幼く見えるのは、アゴが前に出ていないことにも関係しているでしょう。
でもこの弱点、ほんの少しのことで挽回できるんです。
どんな方法かと言えば、アゴ先へのヒアルロン酸注入。
だらっと下にたるむ肉を食い止めることもできるし、なによりアゴがちょっと出るだけで、フェイスラインがとてもシャープに見えるんですよ。
実際、体重はまったく変わっていないのに、アゴ先にヒアルロン酸を注入しただけで、周囲から「痩せましたね!」と言われた人を何人も知っています。
それだけでなく「アカ抜けた」、「美人になった」と褒められることも多いそう。
洗練された美人顔をてっとりばやく手に入れたいなら、アゴのラインを整えるが一番の近道。
でも一歩間違えると不自然で険のある顔になってしまうので、入れ過ぎにはご注意ですよ。
クリニック選びは、伴侶選びと同じぐらい慎重に!
みなさん、美容医療を受けようと思ったとき、クリニックはどうやって決めますか?
雑誌に載っていたから?
ホームページがキレイだったから?
家に近くて通いやすそうだったから?
素敵な女医さんがいるから?
知識が豊富そうな医師が施術してくれるから?
同じ医師の立場から言うと、きちんといろんなリスクを最初に話してくれる医師や、何でも話し合える医師、美的センスのある医師、会うとモチベーションが上がるような医師を選んでほしいなと思います。
たとえば、ボトックス治療。
ボツリヌス製剤は星の数ほど種類があるんですけれど、承認されているのはボトックスビスタ®という薬剤のものだけなんです。
もちろん、承認がないからといって、違法だというわけではありません。
でもアジア人のデータがとても多いので、副作用が起きにくいという安心感があるんです。
ポイントは、承認されていようが未承認だろうが、医師がその製剤の違いや特徴を知ってて使っているのかということ。
そこは医師の良心といえます。
名医じゃなくても良医であれば、きっといろんな悩みも打ち明けやすいし、キレイになる手伝いを真摯にしてくれると思いますね。
シワを取れば見た目はもちろん、気持ちも若返る
ここまでシワについてのお話をしてきましたが、私はシワのすべてを悪とみなしているわけではありません。
幸せの証のような目尻のシワをすべて除去する必要はないと思いますし、シワをゼロにしたら逆に不自然。
でも、眉間のシワや額のシワは、神経質に見えたり、やっぱり老けて見られる要因になるので、できれば消してあげたほうがいいと思うんです。
シワをなくして顔の影を消すと、本当に驚くほど若くなる。シミを消すと5歳若返り、シワを消すと10歳若返るという医学的データもあるほどですから。
日常診療で驚くのは、シワがなくなると見た目だけじゃなく気持ちも若返るということ。
とある50代の男性は、シワを浅くしたことで性格もどんどん明るく穏やかになっていって。ぽっちゃり体型だったのが瘦せてすっきりして、洋服がオシャレになったと思ったら、いつのまにか恋人までできちゃいました。
そんなウマい話があるわけないと思いますか? いえいえ、実話です。
これはほんの一例で、シワを消すことで人生が変わった患者さんはたくさんいるんです。もちろん全部消したら不自然ですから、消すシワ、残すシワについてじっくり見極め、話し合うことが大事。
でももしかしたら、シワ1本であなたの人生、大きく変わるかもしれませんよ。
まとめ
表情ジワ、加齢ジワ…同じようで実は違う種類のシワなのです。そして、出来てしまったシワの種類によって施術の方法も違ってきます。ヒアルロン酸注入は加齢ジワやフェイスラインをスッキリさせる方法に効果的。一方ボトックス注射は筋肉をリラックスさせるので表情ジワに効果的。さらに、若いうちからボトックス注射を定期的に行うことでシワ予防にもなります。目の下のちりめんジワのように治療が難しいシワを作らない為にも、早めのボトックス注射は有効ですよ。
しかし、ヒアルロン酸注入もボトックス注射もやり過ぎはよくありません。必要以上にシワを取ってしまうと不自然になってしまうのです。若かりし頃のシワのない顔を取り戻したい気持ちはわかりますが、年相応のほどよい老け感は大切です。「なんだか最近、あの人の顔怖いな」よりも「幸せそうで、綺麗な人だな」と思われたほうが断然にいいですよね。
まずは、眉間や額など、消した方がいいシワを優先的に対処してみてはどうでしょうか。
次回はスキンケアの方法について、詳しくお話します。