前回のコラムでは、脱毛症の主な原因について触れました。脱毛の原因はさまざまですが、医学的にみた「脱毛症の種類」もいくつかに分類されます。今回は、悩ましい女性の薄毛がどのように分類されるのかを見てみましょう。
FAGA(女性男性型脱毛症)
FAGAは、AGAの女性版のようなイメージです。医学的には「びまん性脱毛症」とも呼ばれます。「びまん」とは「広範囲に広がる」という意味で、髪の毛全体が薄くなっていく脱毛症のことです。
AGA(男性型脱毛症)の症状とは違い、分け目が目立つ、ボリュームが減る、髪が細くなる、特に頭頂部の地肌が透けて見える、といった特徴があります。
薄毛の進行はAGAと同じで、髪の休止期の割合が多くなり、抜け毛が増え脱毛症が進んでいきます。
FAGAの主な原因は
- 過度のストレス
- 極端なダイエット、食生活の乱れ
- 産後の体調不良
- 代謝異常
- ホルモンの変化
- 貧血
- パーマ・カラーによるダメージ など
全ての原因を取り除くのは難しいですが、男性に比べて改善する可能性は高いので、早めの対策や適切な治療が症状を改善していくことにつながります。
分娩後脱毛症
出産後に起きる脱毛症のこと。
妊娠中は、髪の成長に関係するエストロゲンの分泌が活発になり、抜け毛が減ります。しかし、出産後エストロゲンの分泌量が急激に減るため、妊娠中に抜けているはずだった毛髪が一気に抜けます。結果として「抜け毛の量が異常に増える」となるのです。
また、産後の睡眠不足、食生活の乱れ、育児のストレスなども、脱毛の要因となります。
しかし、分娩後脱毛症は「ホルモンバランスの乱れ」が主な原因となるので、基本的には半年から1年ほどで治まっていきます。
ただし、出産から1年以上経過しても薄毛が改善されない場合は、別の原因があるかもしれません。
牽引性脱毛症
その名の通り「髪を引っ張ることで起こる脱毛症」で、髪を結ぶ女性に多く見られます。引っ張られている部分が抜けるため、生え際や側頭部が薄毛になりやすいのが特徴です。
頭皮に負担のかかる髪形を続けている、帽子を長時間かぶっている、ストレスで髪を触る癖があるなど、髪が引っ張られることが原因です。
このような方で薄毛が目立ってきた場合、牽引性脱毛症の可能性がありますので、時には髪形を変えたり、意識して髪をいじらないようにしたりするという対策が必要です。
脂漏性脱毛症
頭皮全体が脂っぽくなり、湿ったフケやカサブタが発生するのが特徴。頭皮がベタベタする、かゆい、におう、湿ったフケが出るなどの症状がある場合、脂漏性脱毛症の可能性があります。
原因は、脂漏性皮膚炎と言われ、過剰に分泌された皮脂やフケに細菌が繁殖し、頭皮を刺激することです。
皮脂の分泌の増加は、食の欧米化や乱れた食生活が考えられます。また、シャンプーのすすぎ残しや、そもそも皮脂をしっかり落とせていないなど、不適切な洗髪で頭皮環境が悪化することも、原因の一つになります。
ひこう性脱毛症
頭皮が乾燥している、乾いたフケが大量にでる、かゆみ、赤みがあるなどの症状が見られます。代表的な原因は、過度の洗髪とビタミン不足です。
洗浄力の強いシャンプーの使用や洗いすぎなどによって、必要な皮脂まで洗い落としてしまうと、頭皮が乾燥してしまいます。さらに、ビタミンA、B1、B2といったビタミンが不足すると、頭皮環境をより悪化させてしまいます。
さらに、スタイリング剤のつけ過ぎや洗い残しがあったり、かさぶた状のフケがあったりすると毛穴をふさぎ、薄毛の原因になることもあります。
円形脱毛症
コインのように円く髪の毛の一部がごっそり抜けて、円形に毛が脱落して無くなってしまうのが、円形脱毛症の特徴です。1ヶ所で起こる単発型、2ヵ所以上で起こる多発型、頭全体で起こる全頭型の3つに分類され、脱毛部分の大きさもさまざまです。
突然髪の毛がごっそりと抜けてしまったら、円形脱毛症の可能性があります。『日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2010』によると、原因として最も有力なのは、毛包を標的にした自己免疫疾患とされています。
自己免疫疾患とは、本来身体を守る免疫が自分の組織や細胞を異物と認識して攻撃してしまうこと。自己免疫疾患を引き起こす要因は、疲労やストレス、遺伝と言われています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ご自分がどのような症状でどんなタイプの脱毛症に当てはまるのか、参考になりましたでしょうか。ここでご紹介した種類や症状は、脱毛症の中でも代表的なものです。「私はこのタイプでいいのかしら?」と悩むようであれば、医療機関での診断を受け、早めに適切な対策をとり改善していきましょう。
美しく健康的な髪の毛でいられるように、ご自分の頭髪を気遣ってあげてくださいね。